Classici giapponesi con furigana
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てらまち
寺町
岩本 素白
Leggi 寺町 (てらまち) di 岩本 素白 (いわもとそはく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2263 caratteri · 5 schermate
樹の多い山の手の初夏の景色ほど美しいものはない。始めは樹々の若芽が、黒々とした枝の上に緑の点を打って、遠く見ると匂いやかに煙って居るが、その細かい点が日ごとに大きくなって、やがて一刷毛、黄の勝った一団の緑となるまで、日々微妙な変化を示しながら、色の深さを増して行くのは、朝晩眺め尽しても飽きない景色である。
五月の日に光るかなめの若葉、柿の若葉。読我書屋の狭い庭から、段々遠い林に眼をやって、更にあたりの景色に憧れ、ふら/\家を出るのもこの頃である。明るい日は照りながら、どこか大気の中にしっとりとした物があって、梅雨近い空を思わせる。どこかで頓狂に畳を叩く音のするのは、近く来る大掃除の心構えをして居るのであろう。荒物屋、煎餅屋、煙草屋、建具屋、そういう店に交って、出窓に万年青を置いたしもた屋の、古風な潜りのある格子戸には、「焼きつぎ」という古い看板を掛けた家がある。そんな町の中に、珍しい商売の樒問屋があったりして、この山の手の高台の背を走る、狭い町筋の左右に、寺の多いことを語って居る。その町にある狭い横丁、それは急な下り坂になって、小家がちの谷の向うが、又上り坂で、その先は若葉で隠れて居るようなところもある。