Classici giapponesi con furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Leggi 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 83.234 caratteri · 160 schermate
―――ねえ、君、お願いだ、それよりほんの束の間でもよい、一と目でも、いや、物越しにでも、お逢い申してお声を聞かして戴きたいのだ。そう思い立ったら怺えきれなくなって、此の雨の中を飛んで来た私を、少しは憐れんで下さらないだろうか」
「でもまだお側の人たちが起きていらっしゃるので、今は工合が悪いんですけど、………」
「待つよ、いくらでも。お側の人が寝てしまうまで。―――今夜はお逢い出来るまで此処を動かないつもりなんだ」
平中は一生懸命にそう云って、
「ねえ、君、お願いだ、ねえ」
と、だゝっ児のように繰り返しつゝ手を取って放さないので、女童は半ばゝ呆れ、半ばゝ怯えたような眼つきで、気ちがいじみた男の顔をしげ/\と視つめていたが、
「では、ほんとうにお待ちになるの?」
と、しょうことなしに云った。
「お待ちになるなら、お側に人がいなくなってから、申上げてだけは見ますけれど」
「有難う、是非頼むよ」
「でもまだなか/\ですのよ」
「そんなことは覚悟の上だよ」
「ほんとうにお取次をするだけよ。あとのことはお請け合い出来ませんわ」
それなら彼処の遣戸の前で、なるべく人目に付かないようにして待っていらっしゃい、と、そう云って女童が引込んでしまってから、平中は凡そどのくらいの間立ちつゞけていたことか。