Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やまのてのこ

山の手の子

水上 滝太郎

Leggi 山の手の子 (やまのてのこ) di 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.551 caratteri · 31 schermate

Aozora Bunko

やがて祭りが終っても柳屋の店先はお祭りの話ばかりだった。向う横町の樽神輿と衝突した子供たちの功名談を妬ましいほど勇ましいと思った。若い衆の間に評判される踊り屋台にお鶴が出たということは限りなく美しいものに憧るる私の心を喜ばせたとともに自分がそれを見なかった口惜しさもいかばかり深いものであったろう。けれども私はすぐさまわが羨望の的だった絵双紙屋の店先の滝夜叉姫の一枚絵をお鶴と結びつけてしまった。お鶴の膝に抱かれながら私は聞いた。

「お鶴さんは踊り屋台に出て何をしたの」

「何だったろう。当てて御覧」

「滝夜叉かい」

「エエなぜ」

「だって滝夜叉が一番いいんだもの」

お鶴は嬉しそうに笑ってまた頬擦りをするのだった。真実にお鶴が滝夜叉姫になったのかどうか。私の言うままに、良い加減にそうだと答えたものなのか私は知らないが、古い錦絵の滝夜叉姫と踊り屋台に立ったお鶴とは全く同一だったように思われて、踊り屋台を見なかったにもかかわらず二十年後の今もなお私はまざまざと美しい絵にしてそれを幻に見ることが出来る。

土用のうちは海近い南の浜辺で暮した。一時として静まらぬ海の不思議がすでに子供心を奪ってしまったので私は物欲しい心持を知らずに過ぎた。