Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やぎひげへんしゅうちょう

山羊髯編輯長

夢野 久作

Leggi 山羊髯編輯長 (やぎひげへんしゅうちょう) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.441 caratteri · 102 schermate

Aozora Bunko

洗い直して来ようかしらんと思って、洗面所らしい処を見まわしているうちに背後の扉が音もなく開(あ)いた。スバラシイ幻影が音もなく辷(すべ)り込んで来て、しなやかに吾輩の前に立止まった。香水の匂いの棚引く中に恭(うやうや)しく頭を下げた。

何という生地(きじ)かわからぬ金線入(きんせんいり)、刺繍裾模様の訪問着に金紗(きんしゃ)の黒紋付、水々しい大丸髷(おおまるまげ)だ。上げた顔を見ると夢二式の大きな眼。小さな唇。卵型の腮(あご)。とても気品のある貴婦人だ。年齢なんかわからない位だ。

吾輩は二重三重に面喰って頭を下げた。

「僕は……私は……只今名刺を差上げました玄洋日報社の羽束という者ですが」

「わたくしは安島二郎の家内で御座います」

「あ……そうですか」

やっとわかった。安島二郎というのは当主、安島一郎子爵の弟で、現在、鎮西(ちんぜい)電力会社の重役をしている。有名な道楽者だ。兄の炭坑王の家(うち)に同居していると見える。

「……あの……何か御用で……」

そういう地声が、すこしシャ嗄(が)れているところをみると、どうやらこの夫人の素性がわかるようだ。無論、風邪を引いてるんじゃあるまい。