Classici giapponesi con furigana
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あらし
嵐
寺田 寅彦
Leggi 嵐 (あらし) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4217 caratteri · 9 schermate
土用の日ざしが狭い土堤いっぱいに涼しい松の影をこしらえて飽き足らず、下の蕃藷畑に這いかかろうとする処に大きな丸い捨石があって、熊さんのためには好い安楽椅子になっている。もう五十を越えているらしい。一体に逞しい骨骼で顔はいつも銅のように光っている。頭はむさ苦しく延び煤けているかと思うと、惜しげもなくクリクリに剃りこぼしたままを、日に当てても平気でいる。
着物は何処かの小使のお古らしい小倉の上衣に、渋色染の股引は囚徒のかと思われる。一体に無口らしいが通りがかりの漁師などが声をかけて行くと、オーと重い濁った返事をする。貧苦に沈んだ暗い声ではなくて勢いのある猛獣の吼声のようである。いつも恐ろしく真面目な顔をして煙草をふかしながら沖の方を見ている。怒っているのかと始めは思ったがそうではないらしい。いつ見ても変らぬ、これが熊さんの顔なのであろう。
始めはこの不思議な店、不思議な熊さんを気味悪く思うたが、慣れてしまうとそんな感じもない。松原の外れにこんな店があってこんな人が居るのは極めて自然な事となってしまって、熊さんの歴史やこの店のいわれなどについて、少しも想像をした事もなく、人に尋ねてみる気も出なかった。