Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
あらし
嵐
島崎 藤村
Leggi 嵐 (あらし) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 54.007 caratteri · 108 schermate
私はよくそう思った。これはまだ著作で家族を養えるような時代ではないのだと。私もやせ我慢にやせ我慢を重ねていたが、親子四人に女中を一人置いて、毎月六七十円の生活費を産み出すにすら骨が折れた。そのころの私たちは十六円の家賃の家で辛抱したが、それすら高過ぎると思ったくらいだ。
三年の外国の旅も、私の生涯の中でのさびしい時であったような気がする。もっとも、その間には、これまで踏んだことのない土を踏み、交わったことのない人にも交わってみ、陰もあり日向もあるのだからその複雑な気持ちはちょっと言葉には尽くせない。実に無造作に、私はあの旅に上って行った。その無造作は、自分の書斎を外国の町に移すぐらいの考えでいた。全く知らない土地に身を置いて見ると、とかく旅の心は落ちつかず、思うように筆も取れない。著作をしても旅を続けられるつもりの私は、かねての約束もその十が一をも果たし得なかった。「これまで外国に来て、著作をしたという人のためしがない。」と言って、ある旅行者に笑われたこともある。でも私は国を出るころから思い立っていた著作の一つだけは、どうにかしてそれを書きあげたいと思ったが、とうとう草稿の半ばで筆を投げてしまった。