Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まぼろしのその

幻の園

豊島 与志雄

Leggi 幻の園 (まぼろしのその) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6788 caratteri · 14 schermate

Aozora Bunko

それは祖母にとって、何かしら一種の贅沢なたしなみみたいなもののようでした。

夕食後、家の人たちが茶の間でいろいろな用談を初めます時など、私は祖母についてその居間に退き、炬燵にあたりながらうつらうつらするのでした。祖母は昔噺をやめて、じっと外の物音に耳をすますようなことがありました。そういう時に限って、屡々、裏の大楠の高い茂みのなかに、異様な鳴声がしたり、激しい物音がしたりしました。

私がぞっとして、眼付で尋ねますと、祖母は柔かなたるんだ頬にやさしい笑みを浮べて云いました。

「恐がることはありません。狐ですよ。お稲荷様が祭ってあるでしょう。」

*

この物語に、祖父や父母や其他の面影が立現われぬからといって、咎めないで下さい。それらの人々のなまなましい面影が浮ばなかったことは、筆者にとってせめてもの慰めです。これは古里の幻の園で、いにしえの心の港です。