Classici giapponesi con furigana
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Leggi 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.797 caratteri · 107 schermate
そうだ、そのコルトンだと林は心の中に叫んだ。もっとも彼は後にも先にも、一度しかその男と顔を合した事はなかった。而もそれは二十年以前チャタムの町で、エリスがひとりの男と一緒に歩いていた時の事であった。その男がコルトンであると、彼は後から聞されたのだ。
フト廊下に跫音がしたので、林はハッとしたが、どうする事も出来ずに、其儘部屋に続いた奥の寝室へ隠れた。彼は寝台の下で息を殺していると、跫音は部屋の前で止って、ツカツカと誰かが表部屋へ入ってきた。幸いにも数分の後に、跫音は廊下の外へ消えてしまった。
林は危い思をしてようやく自室へ戻った。彼はつづいて戸外へ出たが、コルトンの姿は何処にも見えなかった。彼は物思いに沈みながら、歩調を緩めてブラブラと歩いているうちに、いつかクロムウェル街のエリスの家の前へ出てしまった。時計を見ると、九時を大分過ぎていたので、旅館へ引返した。
コルトンはもう部屋へ戻っていた。霎時コトコトと牀の上を歩いているような物音がしていたが、それきり音は歇んで、其儘夜が明けた。
翌日コルトンは一足も外出しないで、昼まで部屋に引籠っていた。給仕を呼んで昼食をも自室に運ぶように命じているらしかったが。