Classici giapponesi con furigana
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Leggi 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.797 caratteri · 107 schermate
灌木の間を貫いている明るい小径の突あたりに、終日、青空の白雲を映しているような古い池がある。庭園はさして広くはないが、三方の煉瓦塀の上に常盤樹が覆いかぶさるように枝を交えている様は、市中の住居とは思われない程であった。
フト気がつくと、窓の下の横通りに面した庭木戸が二寸計り開いていて、屋根を離れた朝日が戸の隙間を赤くしていた。
「誰かが庭口から出入りしたのだな、然し植木屋が入っている訳でなし、家族のものが枯木を積重ねたあのような庭口から出入りする筈はないが……」とそんな事を漠然と思耽っていると、突然静まり返った階下から無気味な食事の鐘が聞えてきた。
私は手早く衣服を着けて食堂へ下りると、老人はとっくに食卓に就いていた。
「今日はS街の国民銀行へいって、十二番の窓口へこの書類を差出し、そこで用紙に署名をしてきて貰いたい」老人は私に銀行宛の厚い状袋を渡した。
国民銀行はS街の辻にあった。私が食事を済して銀行へついたのは九時半であった。窓口へ書類を差出して前の椅子に控えていると、商人体の男達や、白手袋に杖を持った気取った男や、三つ釦のこくめいなモーニングを着た律義らしい老人、其他とりどりに盛装した若い女達が、広い構内をざわざわと歩いていた。