Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかげのまち

幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選

松本 泰

Leggi 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.797 caratteri · 107 schermate

Aozora Bunko

何かしら私はすっかり重荷を下したような心持で、敷石の上を歩いていると、すぐ背後に気忙しい小刻みの靴音が聞え、続いて、

「モシモシ、失礼ですが、鳥渡……」という婦人の声がした。振返ると、何時の間にか先刻の老婦人が立っている。

「いつぞや、サボイの食堂でお目にかかりましたね。あの時のお方でしょう」と彼女は微笑いながらいった。

「エエ、私です。あの節は失礼いたしました」

「どう致しまして……ホホホ……貴郎が失礼をなすったのは、たった今でしょう。貴郎は銀行の前から、わざわざ私共を尾行けていらっしてね。何という物好きな方でしょうと、お嬢様と二人でお噂をしていたのですよ」老婦人は相変らず片頬に微笑を浮べながらいった。

「申訳ありません。実はご推察の通りです。銀行で貴女をお見掛けしましたので、若しやお嬢様と御一緒ではないかと思い、せめてお住居だけでもと存じましたのです」

「まア御熱心ですのね。お嬢様は東洋の美術品に大層興味を持っていらっしゃるので、日本の紳士とお近付になるのをお喜びですの。毎日午後はお宅にいらっしゃるから、いつでもお話しにいらっしゃいませ。そうそう他にお約束がありませんでしたら、今夕五時半のお茶にいらっしゃったら如何?」