Classici giapponesi con furigana
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かれはむかしのかれならず
彼は昔の彼ならず
Leggi 彼は昔の彼ならず (かれはむかしのかれならず) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.274 caratteri · 57 schermate
よほどあわてていたものとみえる。はっと気づいたけれど、僕はそれでもわざとゆっくり、カランから湯を出して、てのひらの泡を洗いおとし、湯槽へはいった。
「先晩はどうも。」僕は流石に恥かしい思いであった。
「いいえ。」青扇はすましこんでいた。「あなた、これは木曾川の上流ですよ。」
僕は、青扇の瞳の方向によって、彼が湯槽のうえのペンキ画について言っているのだということを知った。
「ペンキ画のほうがよいのですよ。ほんとうの木曾川よりはね。いいえ。ペンキ画だからよいのでしょう。」そう言いながら僕をふりかえってみて微笑んだ。
「ええ。」僕も微笑んだ。彼の言葉の意味がわからなかったのである。
「これでも苦労したものですよ。良心のある画ですね。これを画いたペンキ屋の奴、この風呂へは、決して来ませんよ。」
「来るのじゃないでしょうか。自分の画を眺めながら、しずかにお湯にひたっているというのもわるくないでしょう。」
僕のそういったような言葉はどうやら青扇の侮蔑を買ったらしく彼は、さあ、と言ったきりで、自分の両手の手の甲をそろっと並べ、十枚の爪を眺めていた。
青扇は、さきに風呂から出た。