Classici giapponesi con furigana
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ふっかつさい
復活祭
久生 十蘭
Leggi 復活祭 (ふっかつさい) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.018 caratteri · 23 schermate
小原はグラスを置いてタンブラーの水をひと口飲むと、眼にしみるような白いハンケチで唇を拭き、寛濶な足どりで悠然とこっちへやってきた。
「よう、どうしたい」
小原は川田を見て冷淡にうなずき、足をとめて鶴代の顔をながめていたが、そのうちになんともいいようのない深味のある笑顔になって、
「ツルさんだ。こりやおどろいた。ずいぶんひさしぶりだったなア」
軋るようなれいのしゃがれ声でいいながら、なつかしそうに鶴代のほうへ手をさしだした。
歳月の力も小原には作用しなかったのだとみえる。どんなに少なく数えても五十六、七にはなっているはずなのに、どこにも小皺ひとつなく、髪も口髭も二十年前のように黒々と濡れ、唇は血の色が透けて少年のような無垢の美しさをたもっている。きっちりと身についたカッタウェーは小原の商標のようなものだが、薄い卵色の両前のウェースト・コートに黒リボンで縁取した英国風のトルウザアス、コラ織らしい渋い幅広襟飾という、一種、不朽の風姿をつくりあげていた。
二十年前、六十丁目のみじめなホールで握手した、これがあのときの手なのだと、鶴代はぞっとするような思いで小原の手を握った。