Classici giapponesi con furigana
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びしょう
微笑
豊島 与志雄
Leggi 微笑 (びしょう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.995 caratteri · 43 schermate
今に誰か来るだろうと思って待っていると、いつのまにか時がすぎて電車が来た。私達は軽い失望を覚えた。わざわざも一台電車を待つだけの勇気はなかった。
けれども次の金曜には、村瀬が一人見つけたといった。でっぷり肥った赫ら顔の折鞄をマントの下に抱え込んだ男だった。私はその姿を見ると興ざめた心地がした。それで順番を村瀬に譲って、傍から見ていた。
粗らに二三人の人が歩廊には佇んでいた。赫ら顔の男は柱によりかかるようにしてそのうちに立っていた。村瀬は何気ない風で近づいて行って、その側に立った。私は息をこらした。然し村瀬はいつまでも何とも云わなかった。「臆病なんだな」と私は思った。けれどもやがて、彼は顔を上げて私の方をちらと見たが、傍の男にこんなことを云った。
「馬鹿に寒いですね。」
男は変な顔をして村瀬を顧みたが、それでも答えた。
「そうですね。」その声は嗄れていた。
「度々こちらへお出でですか。」
「え?」
「いつか此処でお目にかかったように思いますが。」
「そうですか。」と答えて彼は村瀬の顔を窺った。
「どちらへお帰りです。」
「家へ帰るんです。」
そう云いすてて男はふいと向うへ歩き出してしまった。