Classici giapponesi con furigana
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びしょう
微笑
豊島 与志雄
Leggi 微笑 (びしょう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.995 caratteri · 43 schermate
雪の夜には別に不思議でもないが、その洋傘と足駄とが私には異様に感じられた。
彼は私達の方へは眼もくれず、真直に待合所の中へはいって行って、火鉢の上に足をかざした。それから煙草を一本取出して火をつけながら、何やらじっと考え込んでいるらしかった。私達の方をちらと顧みたが、またそのまま眼を伏せてしまった。然し私は彼の後姿で、彼の心は絶えず私達の方へ向けられてることを感じた。
私達の外には商人体の二人連れの男と女中らしい一人の女とだけだった。皆待合所の中にはいっていた。時機は絶好だった。私は村瀬を其処に残して、向うの柱の影に立ってる女の方へ歩いて行った。女はちらと私に微笑みかけたが、急にわきを向いて取り澄した顔をした。
私は暫く立っていたが、やがてこう云った。
「馬鹿に冷えますね。」
「はあ。」
妙な返事だと私は思った。
「然し風が無いので助かりますね。」
「ほんとにね。」と云ったが、此度は彼女は調子を変えた。「随分電車が遅うございますこと。」
「そうです。こんな晩に待たせるのは不道徳ですよ。」
「まあ不道徳ですって……。」
その時かの男が待合所を出て私達の方へ歩いてくるのを、私は横目で認めた。