Classici giapponesi con furigana
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びしょう
微笑
豊島 与志雄
Leggi 微笑 (びしょう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.995 caratteri · 43 schermate
私が暫く行かないと、向うから誘いの葉書を寄した。坂口も隙で退屈してる男だった。昼間は会社に勤めていたが、夜になるともう家で勉強する気も起らないとみえて、妻と女中と三人きりの家庭に肥った身体をもてあつかっていた。その上人のいい彼は、私が長い関係の女と別れた前後の事情を知っていて、幾分私を慰めようとする心持ちもあったらしい。そして私の方でも、他の友人などを尋ねて無駄口をきくよりも、彼の所へ行ってすぐに碁盤に向う方が、どれだけいいか分らなかった。妻君の方とも私は前から知ってる気の置けない間柄であった。
それに、上野からS――までの山の手線電車は、退屈しきってる私の心に或る面白さを与えた。
夜の十二時すぎ、S――駅の歩廊の上に在る待合所で、私はよく、十分、十五分、時には三十分近くも待たされることがあった。真中に四角な大きな火鉢が置いてあったが、中の火は大抵白い灰ばかりになっていた。扉も無い四方の入口からは寒風が遠慮なく吹き込んできた。木の腰掛に坐っていると、足の先からぞくぞくと寒さが全身に上ってきた。実際その狭い待合所の中にはいってきて、冷たい腰掛に坐る者は、老人か疲れた者ばかりだった。