Classici giapponesi con furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
粋肌なおかみさんで、弟子後輩もよくやって来、朝から陽気になることもある。「どう。お隣りの書生さんも、こちらへ来て、一杯おやンなすっちゃア」なんて、声をかけられたりするが、その人達の洗練された諧謔やアカ抜けた小唄など聞いては、首がすくむだけだった。
しかしぼくの三畳へも、以来とみに訪客は多かった。仕事仲間はべつとして、その頃もう上海から帰っていた川上三太郎氏はすぐ眼と鼻の先の左竹にいたし、柳樽寺同人の誰彼だの、井上剣花坊氏だの、談論風発なら、お隣りにも負けなかった。そして、階下の余り流行らない髪結さんの御亭主は、キナ粉をまぶした蜜団子を売っていたので、こっちはそれを階下から取寄せて、番茶を貰うことにきめていた。
句作や江戸文学研究の上で教えをうけたことを除いても、井上氏夫妻からは個人的にも、並ならないお世話を蒙ッた。この事は多年いう折もなかったのでぜひ書いておきたい。
上京前からの御縁だった。井上秋剣の名で、中学文壇その他の文芸誌に、詩や文章の選、また小説評論も書いておられた。日本新聞の上では、三宅雪嶺、福本日南などと並ぶ社会評論をも見せていたかと記憶する。