Classici giapponesi con furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
ある時、ぼくが見ていたら赤い紐で法螺貝を首に掛けたそのお医者が、舞い戻って来た息子の襟がみをつかんで、お尻をぴしゃぴしゃなぐっていた。ぼくは自分が打たれているような罪悪感に襲われた。
どこの家庭でも、メンコや根ッ木みたいな博奕的遊戯は、決していいとはしていなかった。ぼくなども隠れてやっていたのである。社会そのものに児童への指導も関心もなかったので、家庭の責任はその全部であった。自然、児童にたいして、家庭はきびしい所でないわけにゆかなかった。
月の晩である。小高い住宅地の一面に、一つ一つ生け垣につつまれた低い屋根が見え、黄色がかった鈍いランプの灯火があちこちに洩れている。
この界隈では、どの家でも職業として、日当りのいい出窓に机をおき、種々な輸出物の地紙に胡粉絵を画いていた。何に使用されるのか、いずれ皆、弁天通りの輸出商か居留地などへ行くものであろう。チリメン紙だの、扇子の地紙だの、日傘や岐阜提灯などに、花鳥や富士山や鳥居などが、職人的手法で、おもしろく描かれてゆくのを、ぼくらはよく、窓の外から背のびしながら見惚れていたものだった。
この近所での遊び仲間は、そうした職人絵描きの子だの、牧師の子だの、医者や勤め人といったような家庭の子供達だったが、その晩は、どうして夜まで遊んでいたのか、ぼくらは、野良犬のひとかたまり