Classici giapponesi con furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
業というのか根性というのかわれながらこんなものを書く気になった気がしれない。
なぜならば、ぼくは日記すらつけ得ずに来たほど自分で自分に触れられない臆病者で自瞞にみちている男だ。とても自己を裸にして人に示すなどは出来そうもない。のみならず過去を語ることは両親を語ることになり、明治、大正の世代に小さく灯ともしていた両親の家庭とて、当然な事ながら、まったく封建そのものの一軒だった。いわばぼくなどは“封建の遺子”である。今日の子弟に何を語る資格がある者ではない。また一個の文学者としては正直未完成であり、多少、虚名があるにすぎないものと、自分の事は誰より自分がいちばんよく知っている。
それやこれやは、今日までS氏に謝って来た理由であった。しかしそんな愚痴をいちいち聞いていたら文芸春秋の編集長などは出来るものじゃないそうである。「なにも御自分でいやだと思うことは書く必要はないでしょう。作家だからそんな義務があるなんてわけのもんじゃありませんからね。書けるとこ、書きたいところだけお書きになったらいいじゃありませんか。半自叙伝でいけなければ、四半自叙伝でもいいですよ、とにかくお待ちしますから」