Classici giapponesi con furigana
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あやしきたびそう
怪しき旅僧
田中 貢太郎
Leggi 怪しき旅僧 (あやしきたびそう) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2374 caratteri · 5 schermate
旅僧は土間へ入って手探りに笠を脱ぎ、草鞋を解いて上にあがった。消えかけた地炉の火の微に残っているのが室の真中に見えた。旅僧は其の傍へ往って坐ったが、主翁は何もかまってやらなかった。
「そんじゃ、おまえさんは其処で寝るが好い、私も寝る」と、主翁は其のまま次の室へ往こうとした。
「明りはありますまいか」と、旅僧は呼びとめるように云った。
「はじめに云ったとおり、何もないよ」
主翁は邪慳に云って障子を荒あらしく締めて寝床の中へ入ったが、それでも幾等か気になるので枕頭の障子の破れから覗いた。
と、地炉の火の光で頭だけ朦朧と見えていた旅僧の右の手は、其の時地炉の火の中へ延びて往った。明りが欲しいので火を掻き起しているだろうと思っていると、急に室の中が明るくなった。それは旅僧の右の手の指に、一本一本火が点いて燃えているところであった。主翁は恐れて気が遠くなるように感じた。彼は体を動かすこともできないでぶるぶる顫えながら覗いていた。
奇怪な旅僧はやがて左の手で拳をこしらえて、それをいきなり一方の鼻の穴へ押し込んだが、みるみるそれが臂まで入ってしまった。そして、まもなくそれを抜いて鼻を窘めてくさみをするかと思うと、鼻の穴から二三寸ばかりある人形が、蝗の飛ぶようにひょいひょいと飛び出して、二三百ばかりも畳の上に並んだ。