Classici giapponesi con furigana
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あやしのもの
怪しの者
国枝 史郎
Leggi 怪しの者 (あやしのもの) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.259 caratteri · 25 schermate
一
乞食の権七が物語った。
尾張の国春日井郡、庄内川の岸の、草の中に寝ていたのは、正徳三年六月十日の、午後のことでありました。いくらか靄を含んでいて、白っぽく見えてはおりましたが、でもよく晴れた夏の空を、自分の遊歩場ででもあるかのように、鳶が舞っておりましたっけ。
ふと人の気勢を感じたので、躰を蔽うている草の間から、わたしはそっちを眺めました。
二十八、九歳の職人風の男が、いつのまにやって来たものか、わたしのいるところから数間はなれた岸に、佇んでいるではありませんか。(はてな?)とわたしは思いながら、その男の視線を辿って行きました。岸に近い水面を睨んでいました。そこでわたしも水面を見ました。
(成程、これじゃア誰だって、眼をつけるだろうよ)
と、わたしは呟きましたっけ。この川(幅三十間といわれている庄内川)は、周囲にひろがってい、広漠とした耕地一帯をうるおす、灌漑用の川だったので、上流からは菜の葉や大根の葉や、藁屑などが流れて来ていましたが、どうでしょう、流れて来たそれらの葉や藁屑が、その男の立っている辺まで来ますと、緩く渦をまき、躊躇でもするように漂ったあげく、沈んでしまうではありませんか。