Classici giapponesi con furigana
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あやしのもの
怪しの者
国枝 史郎
Leggi 怪しの者 (あやしのもの) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.259 caratteri · 25 schermate
その間に西条様や藩士の方々は、鶴吉の息の根を止めようとしました。でもわたしは制止しました。
「どうせ死んで行く人間です、静かに死なせてやって下さい」
見れば鶴吉は断末魔に近い眼を、わたしの眼へヒタとつけて、物言いたげにしておりました。そこでわたしは近寄って行って、耳に口を寄せてささやきました。
「言いたいことがあるなら言うがいい」
「乞食に計られて死んだとあっては、オ、俺は死に切れぬ。頼む、明かしてくれ、お前の素性を」
「もっともだ、明かすことにしよう。……尾張家の附家老、犬山の城主、成瀬隼人正の家臣、旗頼母、それが俺だ」
ここで私は言葉を改め、「貴殿のご姓名なんと申されるかな?」
「…………」無言で首を振るのでした。
「隠密として事破れし以上、姓名は言わぬというお心か。ごもっともでござる」
この時突然屋敷内から、火の手が立ち昇りました。
「火事だ!」
「大変だ、作事場が燃える!」
人々は叫んで走って行きました。
「鶴吉殿」と耳に口を寄せ、またわたしはささやきました。
「貴殿をこの地へ遣わした、そのお方が心にかけられた、宗春様ご建造の禁制の大船、ただ今燃えておりまする。