Classici giapponesi con furigana
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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Leggi 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) di 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 109.233 caratteri · 223 schermate
その時、ふと見上げた左手の崖の上に、思いがけないものが立っていたのである。
洋子だった。たしかに菊の縫取りがあった――。
その洋子が、こっそり見送るように川島を見下していたのだ。ばったり眼が合った瞬間、彼女はどぎまぎした様子だったけれど、すぐその手袋のように白い手を振って見せた。
洋子の顔は、気のせいか上気したように赧らんで見えた。そして思わず川島が、両手を口に当ててメガホンのようにし
「洋子さあーん」
と呼んで手を振ったのに、いや、却ってその声が、あたりの森の中にわーんと泌込んで行ったせいか、彼女は、その美しい顔を泣き笑いのように歪めると、ぱっと身を飜えして木々の間に消え失せてしまったのだ。
川島は、いそいでその崖を駈のぼった。
夢中で掴まった草が野薔薇のように刺をもっていた、が、それが痛いということは、しばらく後になって、やっと気がついたくらいである。
だが、そんなにも急いで来たのに、洋子の姿は二度と見ることが出来なかった。
川島は、思い切れぬままに、しばらくあたりを迂路つき廻った末、やっと刺を持った木に引掛っていた洋子の服の引き千切られた一片だけを、見つけ出すことが出来た。