Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きょうふのまぼろしへいだんいん

恐怖の幻兵団員

大倉 燁子

Leggi 恐怖の幻兵団員 (きょうふのまぼろしへいだんいん) di 大倉 燁子 (おおくらてるこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.784 caratteri · 28 schermate

Aozora Bunko

彼自身も大変苦しそうなのがよくわかります。何を苦しんでいるのかは無論わかりません。ただ一人で煩悶しているのですから、私はたまらなくなって、薫さんにその話をしました。

薫さんも暗い表情をして、

『兄さまは何か悪いことでもしているんじゃないか。かの地にいる間は随分乱暴な真似をしたという人もあるから、殊によったら兄さまは人でも殺しているのかも知れませんね、犯罪の発覚を恐れているんじゃないのかなあ。気の弱い男は自分の犯した罪に脅えて発狂するって話もあるから――』

『まさか、そんな大それたことをする方じゃありませんよ。きっと、何か恐いめにあったんでしょう』

『じゃ、あなたが訊いてみたらいいんだ』

『だって、仰しゃらないんですもの』

『肉親だけですよ。ほんとの同情者は――、打ち開けてさえくれれば、僕は兄さまの苦しみを半分わけて背負って上げるがなあ』

薫さんは相変らず気持ちのいい人でした。私は遂々思い切って、ある晩、一雄に云いました。妻としての資格がないから、何事も打ち開けて下さらないのでしょう。それなら已を得ませんから離縁して頂きますわ、と云って、迫りました。

別れる気なんて毛頭ない夫の心を私はよく知っていたのです。