Classici giapponesi con furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Leggi 愛のごとく (あいのごとく) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 103.908 caratteri · 210 schermate
私は同じ方向に向かう国電に、はなればなれに乗ることすら耐えきれなかったのだ。私は歩いて家に帰った。……私は思っていた。たしかに私も自分ひとりのつじつまを合わせるのに熱中して、それをおびやかす富子というひとつの現実を拒絶したのだ。それを正視せねばならないのだ。しかし、それで私はなにを守ったのか。卑劣な、愚かしい、自分ひとりでいたいというあつかましい無気力、自分ひとりでいられるという非人間的な妄想、仲間をもつことを悪だとするばかげきった臆病、そして私は保井進よりさらに勇気に欠け、さらに愚劣なのだ。私はリングにさえ上らずに逃げ出していたのだ。
「ぼくがマリを殺した」すると沈痛に奥歯を噛みしめるようにして、平山が低くいった。「ぼくはこの言葉を、あのおかあちゃんの店からずっと心の中で叫んでいた。あのおかあちゃんだけが、ぼくとマリとのことを、うすうす感づいているみたいなんだ。……ぼくは、マリをころした」
独白は、むしろうれしげな語調にかわっていた。黒いベレをあみだにして、ほとんど恍惚とした目つきで彼は正面のウイスキィ壜の列のうしろを見ていた。小指をぴんと反らせ、グラスを口に運んだ。