Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Leggi 愛のごとく (あいのごとく) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 103.908 caratteri · 210 schermate

Aozora Bunko

銀行員らしく薄地の紺の上下を着た進の、まあたらしい上等の靴下が、その家の中で彼をひどく他人めかせていた。彼は佐伯や女優たちと、あまった花をていねいに棺の上にならべた。劇団からの花籠も運びこまれてきた。

「佐藤」と進は呼んだ。「通知状をね、印刷屋からとってきてくれないか。本町通りだ。どうせいまから書いても、今日の最後のポストには間に合わないかな」

「なあに、それならちょくせつ郵便局に持って行くさ」佐藤は張りきってこたえた。

二人の住んでいたはなれで私たち三人は宛名を書き、だが小田富子の名は分担の中にはなかった。劇団の人びとを帰し、私と佐藤は通夜につきあうことにきめた。劇団の若い座長は、最後までしつっこく進に自殺の原因をたずねていた。「ぜんぜん、わかんないんだよう、あれこれ考えたってしょうがないだろ、いまさら」と、佐藤は叱るようにいった。

十二時をすぎても、棺の置かれた部屋で真理子の母はうつむき、肩がふるえていた。声をたてて泣いているのではなく、涙ももうハンカチに浸みなかった。「カンゼオンナムブツヨウブツ、ウイ……」私は幼いころ、坊主の叔父に暗誦させられた般若心経を、うろおぼえのまま腹に力をこめて口ずさんだ。