Classici giapponesi con furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Leggi 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.728 caratteri · 231 schermate
私は私で恰好のつくまで立っていなければならないし、話がもとに戻るまでには時間がかかったのだ。その時間にある親しさは作り上げることも出来ないし、こわすことも出来ない濃度のある親密感であった。だから、留守の時は却って気楽そうであり、そんな折に外から私が帰って来ると、団欒の破壊者のように思えたのだ。
立原道造は、顔の優しいのとは全然ちがった、喉の奥から出る立派な声帯を持っていた。話し声や笑い声はすでに大家の如き堂々たる声量を持っていて、時々、私はその立派やかな太い声に、耳を立て直すことがあった。或日庭を掃いて如露で水を打ち、茶の間に上ろうとして手を洗ったが、庭羽織と称する古羽織を着用に及んでいて、その羽織は泥もついていたし、裾の方で手を拭いてもよいことになっていた。私がそれでぬれた手を拭いていると、突然、立原は威厳のあるおやじのような声で叱って言った。
「羽織で手を拭いてはいかん。」
私は面白そうに笑って言った。
「これは庭羽織という奴で、手を拭いても宜いことになっているんだ。」
「そうですか。僕はまたそんな事はいかんと思ったのですよ。」
と、立原は例の大家の声音で、あはは、と笑った。