Classici giapponesi con furigana
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われにそむく
我に叛く
宮本 百合子
Leggi 我に叛く (われにそむく) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.414 caratteri · 59 schermate
良人を思い偲ばせるのであろうか。
香の煙が立昇り、見えない空気にゆらぐように、「彼」に心が漂い寄ると、暫く、ゆき子は、云い難い親密さと、寂しさとを同時に感じた。
彼方の黒い植込みからは、チラチラと陽気な燈火が洩れる。「あの、面白そうな笑声! けれども、自分は、ここで、独りで、始めて、感情の全部を恢復し得るのだ。」――全く、家中の者は、悲しいほど、彼女ひとりにたんのうしてくれた。誰も、彼女と共に真木の存在や気分を勘定には入れてくれない。若し、自分が、このまま一生居据ると云っても、恐らく誰一人それを真木のために愕きかなしむ者はなかろうと思うほどの皆の雰囲気が、却てゆき子をしんから悲しくするのである。
床に就くまで部屋に籠っても、ゆき子は仕事に関して、一行の纏った収穫も得なかった。
真木から来た絵葉書をまた丁寧に繰返して見なおしたり、思うともなく×県の、倉座敷で、蘭や夾竹桃の生えた家を思い出したり……、彼女の目の前には、何か云って笑いながら頭を振る良人の顔つきが、身動きをすると胸の痛むほど鮮に甦って来る。
ゆき子は、余り心がさしせまると、そっと雨戸をあけてとめどもなく、月のない庭を歩き廻った。