Classici giapponesi con furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.655 caratteri · 406 schermate
三六
葉子は雷に撃たれたように突然泣きやんで頭をあげた。
すぐ倉地が階子段をのぼって来る音が聞こえた。
「わたし台所に参りますからね」
何も知らなかったらしい岡に、葉子はわずかにそれだけをいって、突然座を立って裏階子に急いだ。と、かけ違いに倉地は座敷にはいって来た。強い酒の香がすぐ部屋の空気をよごした。
「やあ春になりおった。桜が咲いたぜ。おい葉子」
いかにも気さくらしく塩がれた声でこう叫んだ倉地に対して、葉子は返事もできないほど興奮していた。葉子は手に持ったハンケチを口に押し込むようにくわえて、震える手で壁を細かくたたくようにしながら階子段を降りた。
葉子は頭の中に天地の壊れ落ちるような音を聞きながら、そのまま縁に出て庭下駄をはこうとあせったけれどもどうしてもはけないので、はだしのまま庭に出た。そして次の瞬間に自分を見いだした時にはいつ戸をあけたとも知らず物置き小屋の中にはいっていた。
三六
底のない悒鬱がともするとはげしく葉子を襲うようになった。いわれのない激怒がつまらない事にもふと頭をもたげて、葉子はそれを押ししずめる事ができなくなった。春が来て、木の芽から畳の床に至るまですべてのものが膨らんで来た。