Classici giapponesi con furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.655 caratteri · 406 schermate
見た所、そこには何一つ変わった事もなければ変わった物もない。ただ夏の夕が涼しく夜につながろうとしているばかりだった。葉子はきょとんとして庇の下に水々しく漂う月を見やった。
ただ不思議な変化の起こったのは心ばかりだった。荒磯に波また波が千変万化して追いかぶさって来ては激しく打ちくだけて、まっ白な飛沫を空高く突き上げるように、これといって取り留めのない執着や、憤りや、悲しみや、恨みやが蛛手によれ合って、それが自分の周囲の人たちと結び付いて、わけもなく葉子の心をかきむしっていたのに、その夕方の不思議な経験のあとでは、一筋の透明なさびしさだけが秋の水のように果てしもなく流れているばかりだった。不思議な事には寝入っても忘れきれないほどな頭脳の激痛も痕なくなっていた。
神がかりにあった人が神から見放された時のように、葉子は深い肉体の疲労を感じて、寝床の上に打ち伏さってしまった。そうやっていると自分の過去や現在が手に取るようにはっきり考えられ出した。そして冷ややかな悔恨が泉のようにわき出した。
「間違っていた……こう世の中を歩いて来るんじゃなかった。しかしそれはだれの罪だ。