Classici giapponesi con furigana
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あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Leggi 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 43.279 caratteri · 86 schermate
それが一種の反感に似た冷さで、私の方へ対抗的に迫ってきた。彼女に何か悪いことでもしたのではないかしらと、私は妙にぎごちなくなりながら、わざと冗談の調子で尋ねてみた。
「どうしたんです、変に真面目くさった顔をして……。」
彼女はちらと私の方へ黒目を挙げてから、なお四五歩進んだ後で云った。
「私いろいろ考えてみましたけれど……。」
いくら待っても後の言葉がないので、私は静かに促した。
「で……どういうんです?」
「どうしたらいいか分らないんですもの。」
「一体何のことですか。話してしまったらいいじゃありませんか。私の顔を見てどうでもよくなったなんて……。」
「でもあの時は一寸そんな気がしましたけれど……やっぱり……。」
「話してしまった方がいいでしょう。私の顔に何か書いてあるわけでもないでしょうから。」
私は冗談にしてしまおうとしたけれど、今の彼女には手答えもなかった。日傘の先で地面をつっついて歩きながら、恐ろしく真剣に考え耽ってる様子だった。私は何となく不吉な予感を覚えた。実は彼女にその話をさせるために連出したのだったが、そして会話の調子でなおそれを求めてはいたが、公園にはいりかける頃から、もう聞かない方がよいかも知れないという気持が起ってきた。