Classici giapponesi con furigana
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あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Leggi 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 43.279 caratteri · 86 schermate
「どうしたのか、御自分の胸にお聞きなすったら、分る筈です。あんな事をしておいて、よくも私を……。私、のめのめとあの女の前に出ていったかと思うと、口惜しくて、口惜しくて!……。」後の言葉は息と共に喉元につめて、こまかく肩を打震わした。
私はどしりと打ちのめされた気がした。万一の場合を予想する気持になってはいたが、その万一は、そんなことではなくて、もっと遠い他の漠然とした所にあった。何れ俊子に分るかも知れないとは思っていたが、河野さんの家で彼女がそれを聞き出そうとは、夢にも思ってはいなかった。私は彼女について他のことを懸念していたのである。所が……。私は我を忘れて飛び立とうとした。
「え、誰から、誰から聞いたんだ?」
すると彼女は、俄に嘲笑的な調子に変った。
「誰から聞こうと私の勝手ですわ。あなたは、分るまではごまかしておくつもりだったんでしょう。立派なお考えですわ。そして松本さんに向って、場合によっては媒妁人になってあげてもいいなんて、よくも図々しい口が利けたものですね。昨日からどうも様子が変だとは思ったけれど、まさかあの女と……そう思い直して……。私あなたを買いかぶっていました。