Classici giapponesi con furigana
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
Leggi 扇野 (おうぎの) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.727 caratteri · 67 schermate
なんのためにそんなことをするのか、ここでもやはり理由は訊かなかったし、わるびれたようすもなかった。ただ、栄三郎のために役立つのだ、ということをすなおに信じ、そうすることがいかにも嬉しいというふうであった。
踊りが達者だと聞いたが、おつるの歩きぶりはかたちがよく、すっきりと涼やかにみえた。腰も細いし脚が長いので、ぜんたいの線がいっそうひき立つようである。――栄三郎はじっとその姿を見まもった。美しいなと思いながら、その姿から眼を放すことができなかった。おつるはゆっくりと歩いてゆき、向うの雑木林のところで立停った。そこまでいっても、まだ扇子を持っていた。栄三郎の注文したような気持になれなかったのだろう、そのまま暫くぼんやりと立っていたが、やがてまたゆっくりと、こちらへ向って歩きだした。――彼女のうしろから、やや傾いた日が明るくさしつけていた。その逆光の中で、放心したような表情の(色の際立って白い)顔が、殆んど幻想の人のような印象を与えた。栄三郎はわれを忘れて、すぐ近くへ来るまで茫然と見まもるばかりだった。
「――落して来ました」
おつるはそばまで来てそう云い、額の汗を拭きながら頬笑んだ。