Classici giapponesi con furigana
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
Leggi 扇野 (おうぎの) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.727 caratteri · 67 schermate
おけいはほっとしたように「どうぞごゆっくり」と云った。彼の気が変ったのでいかにもほっとしたような顔色であった。――おさとは木戸の脇に待っていた。崖の上から掩いかかる木の茂みの暗がりに、緊張した小さな顔が白く浮いて見えた。
「済みません、こんなところから伺ったりして」とおさとは云った、「お邪魔しては悪いと思ったんですけれど、あんまり可哀そうで見ていられないものですから」
「可哀そうとは、――おつるか」
「毎日来て泣いているんです」おさとは訴えるように云った、「二階のいつかのお座敷だの、このあいだの階下の奥の座敷だのへいって、一人で隠れて眼の腫れるほど泣いていらっしゃるんです」
「しようがないな」
栄三郎は静かに云った。心は裂かれるように痛んだが、顔には苦笑をうかべ、できるだけ平静に自分を抑えつけた。
「先生とはもうお逢いしない約束をなすったんですって、それで、おかみさんやあたしがお呼びしたらって云ってもきかないんです、先生の御迷惑になるし、こんどお逢いすればどうなるかわからないからって、どうしてもお呼びすることはできないって云いながら、毎日泣いてばかりいるんです」