Classici giapponesi con furigana
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
Leggi 扇野 (おうぎの) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.727 caratteri · 67 schermate
栄三郎とおつるは逢い続けた。彼が桑名屋へかようのは一日おきであるが、そのあいだに、夜が更けてからおつるのほうで控え家へ来ることがあった。もちろんどこかの座敷の帰りで、裏木戸からそっと忍んで訪れ、少し話すと帰ってゆくのである。ときにはひどく酔って「このまま泊ってゆく」などと、だだをこねることもあるが、栄三郎が少し強い声をだすと、すぐにおとなしく立ちあがるのであった。
栄三郎は、おさとから聞いたことはすべて知らない顔をしていた。
おつるは病身な母親と姉夫婦(その子供二人)の面倒をみているそうであった。かれらは鳥羽からほんのひと跨ぎ北に当る、小浜という漁村に住んでいる。姉の主人は漁師であるが、酒と博奕が好きで、稼いだものはみな遣ってしまう。人は悪くはないのだが、結局おつるがいるのでおつるに頼ってしまうというところらしい。――おつるは十二の年叶家という置屋へ養女分として入った。それは、おつるが自分で叶家へいって、「あたし芸妓になりたい」と云ったのがきっかけになったのだそうである。(いつか栄三郎に向って「あたし芸妓が好きなんです」と云ったのは誇張ではなかったらしい)叶家のおかみさんはおつるの気性に惚れ、養女分として気を入れて仕込んだ。