Classici giapponesi con furigana
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とびらのかなたへ
扉の彼方へ
岡本 かの子
Leggi 扉の彼方へ (とびらのかなたへ) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8155 caratteri · 17 schermate
私の身体はぶるぶると慄えました。ここまで苦しんだなら、いくら厚い仕切りでも消える筈だ。私の心はくるりと全体の向きを変えました。二人をこの上とも苦しめようとするのは何者だろう。
それは想い出だ。青春への未練だ。私はこの男にそれから逃れさすために、自分も潔くそれを捨てよう。私は女と生れた甲斐には気丈になって、この男を更生さしてやらなければならない。私は今度は進んで自分から良人の胸へ額を持って行きました。
「私も大人になりますから、あなたも過去のことは打切ってね。それからもう明日にも東京へ帰ることにして、すこしうちの事務の相談でもしましょうよ」
結婚式は挙げても、二人の心境がほんとうに茲まで進まなければ、事実上の良人と妻になってはならない――こう良人は潔い遠慮をし、私も自然にそれに従っていたのが、式後一ヶ月以上の礼儀正しい二人の生活内容であったのです。
籔蔭に早咲きの梅の匂う浜田圃の畦を散歩しながら、私は良人が延ばしていた前の妻の墓標を建てることや、珪次の学費の補助のことや、感傷や遠慮を抜いた実質的な相談をしました。蒼溟として暮れかかる松林の上の空に新月が磨ぎ出された。