Classici giapponesi con furigana
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せっぷんをぬすむおんなのはなし
接吻を盗む女の話
佐左木 俊郎
Leggi 接吻を盗む女の話 (せっぷんをぬすむおんなのはなし) di 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4474 caratteri · 10 schermate
「接吻をして頂戴よ。ねえ! 接吻をして頂戴よう。」
おや、まあ! と三枝子は、低声に呟くようにして、自分の耳を疑わずにはいられなかった。
「ねえ! 接吻をして頂戴よう。厭なの? 厭ならいいわ。」
三枝子は驚異と、一種の恐怖とを感じないではいられなかった。無論それは自分の家からして来た声ではなかったが、まだ人通りのある宵の裏街で、一体、どんな女が媚を売ろうとしているのだろう? そしてどんな男が相手になっているのだろう?
三枝子はそんなことを思いながらそこの四辻を左に曲がった。
「おい! 三枝さんかい?」
薄暗がりから、そう言って街燈の下の明るみへ出て来たのは、彼女の夫だった。
「まあ! あなたなの? 私、びっくりしたわ。」
彼女は立ち止まって夫を待った。夫は、彼女が今来た路とは直角に、あの女の声のしていた方の路から来て彼女と一緒になった。
「今日も、遅いんだね。」
「明日は日曜だから。どう? あなたの職業の方は。やっぱり駄目?」
「うむ。どうも……」
遠廻しに! と彼女が、瞬間的に考えたプランを置き去りにして、二人の話は、深刻な加速度をもって、彼の職業の上に落ちて行った。