Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 187.841 caratteri · 376 schermate
駒のたてがみや、鞍総にも火がついた。
「――死のうは一定」
この一語は、彼の心の護符だった。生死の境に立つと、われ知らず、念仏のように、また、謡の文句のように、唇から衝いて出た。
屍、屍、屍。
敵味方の無数の死骸も、踏みこえ、躍りこえ、突撃してゆく彼の眼には、一掬の涙もなかった。
死のうは一定――生身の我も、路傍の死者も、彼は差別を思わないのである。
山科から大津へ。
途々、乱離として、往来に焼け倒れている民家の火の梁も、焔のうずも、彼の行くを妨げることはできなかった。
彼の身そのものが、すでに一炬の炎であった。
駈けつづく彼の幕下も一団の火となって、
「信治様の弔い合戦」
「森、青池、道家殿などの怨みを雪がずに措こうか」
と、猛進してきた。
が、三井寺にも唐崎にも――来てみればもう敵は一兵も見えなかった。すべて叡山へ逃げ上ってしまったのである。
「おお。逃げ足の迅さよ」
――仰ぐと。
鈴ヶ峰、青山岳、坪笠谷のあたりまで、敵の二万余に、一山の僧兵を加えた大軍が、
(逃げたのではない。この陣容がものをいうのはこれからだ)
と、誇示するかのように、旗差物をひるがえしていた。