Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 197.228 caratteri · 394 schermate
ところへ巡視の一将校が、歩卒をしたがえて、突然、入って来た。
「並べ。お見廻りだ」
岩村組の親方がいうと、小屋じゅうの人夫は、みな隅へ寄った。
将士の兵站部は、べつに仮屋を建て増してあるが、ここは大きな民家の土間だ。真っ暗で、そして狭い。
中は混み入って、押し合うくらいである。強右衛門は安全を信じていた。この群れに紛れこんでいる以上、草叢と同じ色をした虫のように自分が思われていたのである。
ところが、事態はただならぬ空気となった。穴山隊の部将であると名乗る巡視の一武者は、
「いや、まったく、柵を通した者の落度だが――たしかに一名、人数が多い。何者かひとり余計に陣所へ入ったものと思われる」
頭数を調べろと声高に命じているのである。
入口を兵が囲んだ。そして一人一人つまみ出して、厳重な再調べが始まったらしい。強右衛門は大いに怖れた。
まさか、人夫の一人や二人ぐらい、何の注意も払われまいと、まったく多寡をくくっていたが、甲軍の厳密さは想像のほかだった。
「しまった」
袋の鼠である。彼の眼はおのずから鋭くなった。
横歩きに――人に気づかれない程度に――彼は背中で壁をすりながら裏口の方へ身の位置を移しかけていた。