Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 187.757 caratteri · 375 schermate
「…………」
誰も立って行って拝みもせねば口にも出さなかったが、皆ひとしい幸福につつまれていた。この城を枕にこの場に死んでも惜しくないというほどな幸福感だった。今日あって明日知れぬ戦国に、よくぞ羽柴家の家中にはなっていたぞ、とも思うのだった。
ふしぎな心理といえばいえないでもない。燈明は一勺の油の作用であり、御榊はそこらにもある植物の一枝である。白い紙包みとて、中には、数箇の蕗のとうがあったに過ぎない。――物としてこれらをみれば物。しかもいと小やかな物とよぶにも足らないほど貧しい物質でしかない。
しかもそれが、人をして泣かしめ、小禄の士をしてすら、時あらば歓んで死なんの思いを内に誓わせている。
蕗のとうは、物だろうか。とよぶのがほんとうだろうか。
蕗のとうのあのほろ苦い――冬中の苦難と春さきの希望を舌に思わすような香と味は――あれは苦いまずいといって嫌う人もあるが、好む人はいたくその苦味と苦薬の香を愛するのである。
四季をもち、その四季からなっている微妙な国土は、一草の芽にもまた単純に噛み難い香、色、味を含んでいる。なおそれが人の掌に取り上げられ、人の愛にかけられると、物と心との区別はまったくないことになる。