Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんじゅのことば

新樹の言葉

太宰 治

Leggi 新樹の言葉 (しんじゅのことば) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.156 caratteri · 59 schermate

Aozora Bunko

令嬢は、通りすぎて行きます。幸福は、まだまだ、おあずけでございます。変化は、背後から、やって来ました。とんとん、博士の脊中を軽く叩いたひとがございます。こんどは、ほんとう。」

長女は伏目がちに、そこまで語って、それからあわてて眼鏡をはずし、ハンケチで眼鏡の玉をせっせと拭きはじめた。これは、長女の多少てれくさい思いのときに、きっとはじめる習癖である。

次男が、つづけた。

「どうも、僕には、描写が、うまくできんので、――いや、できんこともないが、きょうは、少しめんどうくさい。簡潔に、やってしまいましょう。」生意気である。「博士が、うしろを振りむくと、四十ちかい、ふとったマダムが立って居ります。いかにも奇妙な顔の、小さい犬を一匹だいている。

ふたりは、こんな話をした。

――御幸福?

――ああ、仕合せだ。おまえがいなくなってから、すべてが、よろしく、すべてが、つまり、おのぞみどおりだ。

――ちぇっ、若いのをおもらいになったんでしょう?

――わるいかね。

――ええ、わるいわ。あたしが犬の道楽さえ、よしたら、いつでも、また、あなたのところへ帰っていいって、そうちゃんと約束があったじゃないの。