Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate

Aozora Bunko

「君、僕も会話を勉強したいんだが、暇があったらアンリエットさんに、ときどき僕の方へも廻って貰ってくれないかね。」

矢代は久慈とアンリエットとを眺めながら冗談らしく云ってみた。

「いや、それや、駄目だ。この人は今は僕の秘書見たいだからね。いろんなことを験べて貰ってるので、急がしいんだよ。」

「しかし、月謝を払って僕が生徒になりたいと頼むの、何が悪いんだ。」

「それや君のは日本の理窟だよ。ここじゃ、日本の理窟は通らないんだからね、郷に入れば郷に従えってこと、君、知ってるだろう。」

「それや、日本の理窟じゃないか。」と矢代は云って笑った。

「ところが、これだけは万国共通の論理だよ。郷に入れば郷に従うのは当然さ。」

「そんなら、日本へ来ている外人はどうなんだ。日本人だけが郷に入って郷に従わねばならんのなら、何も万国共通の論理の権威はなくなるじゃないか。」

こういうことになれば、例え笑話といえども矢代と久慈との論争はいつも果しがなかった。

「今日は君、もう勘弁してくれ。今夜はパリの礼儀に従おうじゃないか。」

久慈はアンリエットのコップに葡萄酒をついで云った。アンリエットはさきからにこにこしながら、美しい前歯で前菜の赤い小蕪を噛んでいたが、饂飩のようなスパゲッティが湯気を立てて出て来ると巧にフォークへ巻きつけた。