Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate

Aozora Bunko

」と千鶴子の母は娘に云って立ち上ると、それからまた、「矢代さん胃がお悪いんだそうですがら、ビールをあまりお奨めしちゃいけませんよ。」と附け加えた。千鶴子は出し抜けな母の注意が飲み込みかねたと見え、

「いいんですのよ、この方。」と一寸笑って云ったが、母が部屋から消えるとすぐ矢代に対い、

「あなた、あんなことお母さんに仰言ったの。胃がお悪いなんて。」と訊ねた。

「胃はやはり良くないからな僕は。ついうっかりしちゃったんですよ。ね、塩野君。今夜はもう失礼しようじゃないか。」と矢代は塩野に云って時計を見た。

「いいよ。これから帰るの遅いから、ここで泊めて貰おう。」と塩野はどういうものか強情に居直った。

「君は今夜はまた、あんまり面白がりすぎていけないね。僕は気が小さいんだからな。」

矢代がそう云っているとき、廊下の外から千鶴子の母が急にまた、「千鶴子さん、千鶴子さん。」と二度ばかり呼ぶのが聞えた。千鶴子は聞き耳を立てるように表情を締め、「はい。」と云ってすぐ部屋から軽く出ていったが、その後で塩野は矢代の方へ傾きながら声を低め、

「大丈夫だ。お祝いしよう。」と云うと、かなり興奮の強い手もとでコップをかちりと矢代のに合せた。