Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にほんにおけるくりっぷんじけん

日本に於けるクリップン事件

谷崎 潤一郎

Leggi 日本に於けるクリップン事件 (にほんにおけるくりっぷんじけん) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.290 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

と、一生懸命に声を張り上げて、犬を制するのを聞いた。犬はそれきり大人しくなって、敵対行動を止めはしたものの、なおかつ警戒するように、馬方の体に附き纒いながらヒクヒク臭いを嗅いでいた。

次の瞬間に室内を見廻した馬方は、寝台の上に、一人の男が赤裸にされ、鎖を以て両手と両足を縛られているのを認めた。彼は体じゅうを滅多矢鱈に打たれたものらしく、ところどころにみみず脹れが出来、血が流れていた。疑いもなく助けを求めたのはこの男で、そうしてまた、たった今犬を叱ったのもこの男に違いなかった。が、それよりもなお悲惨なのは、寝台の脚下に仰向けになって倒れている、一人の若い断髪の女の屍骸であった。女は派手な刺繍のあるパジャマを着て、――馬方の言葉に従えば「支那服を着て、」――右の手に革の鞭を持ったまま、むごたらしく頸部を抉られ、傷口から流れる血の海の中に死んでいた。馬方の混乱した頭には、咄嗟の場合、この物凄い光景がぼんやりと瞳に映ったのみで、これらの事が何を意味するか、とんと解釈がつかなかったが、間もなく彼は、さっきのエスという犬が同じように血を浴びて、その唇から生々しい赤いすじを滴らしているのを発見した。