Classici giapponesi con furigana
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にほんにおけるくりっぷんじけん
日本に於けるクリップン事件
谷崎 潤一郎
Leggi 日本に於けるクリップン事件 (にほんにおけるくりっぷんじけん) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.290 caratteri · 21 schermate
それは勿論そうとは限らない。しかしながら、心で軽蔑されるといっても、実のところはそういう関係を仮りに拵え、あたかもそれを事実である如く空想して喜ぶのであって、いい換えれば一種の芝居、狂言に過ぎない。何人といえども、真に尊敬に値いする女、心から彼を軽蔑する程の高貴な女なら、全然彼を相手にするはずがないことを知っているだろう。つまりマゾヒストは、実際に女の奴隷になるのでなく、そう見えるのを喜ぶのである。見える以上に、ほんとうに奴隷にされたらば、彼等は迷惑するのである。故に彼等は利己主義者であって、たまたま狂言に深入りをし過ぎ、誤まって死ぬことはあろうけれども、自ら進んで、殉教者の如く女の前に身命を投げ出すことは絶対にない。彼等の享楽する快感は、間接または直接に官能を刺戟する結果で、精神的の何物でもない。彼等は彼等の妻や情婦を、女神の如く崇拝し、暴君の如く仰ぎ見ているようであって、その真相は彼等の特殊なる性慾に愉悦を与うる一つの人形、一つの器具としているのである。人形であり器具であるからして、飽きの来ることも当然であり、より良き人形、より良き器具に出遇った場合には、その方を使いたくなるでもあろう。