Classici giapponesi con furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Leggi 日本婦道記 (にほんふどうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8286 caratteri · 16 schermate
人の眼にも見えず、誰にも気づかれぬところに、……それは心です、良人に仕え家をまもることのほかには、塵もとどめぬ妻の心です」
「…………」
「学問諸芸にはそれぞれ徳があり、ならい覚えて心の糧とすれば人を高めます、けれどもその道の奥をきわめようとするようになると『妻の心』に隙ができます、いかに猟の名人でも一時に二兎を追うことはできません。妻が身命をうちこむのは、家をまもり良人に仕えることだけです、そこから少しでも心をそらすことは、眼に見えずとも不貞をいだくことです」
「母上さま」
加代が、とつぜんそう云いながらひれ伏した、つきあげるような声だった、そしてひれ伏したその背がかすかに顫えた。
「わたくし、あやまっておりました」
「……加代さん」
かな女は頷きながら云った。
「もう仰しゃるな、年寄の愚痴がいくらかでもお役にたてばなによりです、そして、そこの覚悟さえついておいでなら、歌をおつづけなすっても結構なのですよ」
しずかに微笑しながら云うかな女の、老をたたんだ顔には些かの翳もなかった。武家の妻としての、生き方のきびしさ、そのきびしい生き方のなかで、さらに峻烈に身を持してきたかな女のこしかたこそ、人の眼にも触れず耳にも伝わらぬだけ、霜雪をしのいで咲く深山の梅のかぐわしさが思われる。