Classici giapponesi con furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Leggi 日本婦道記 (にほんふどうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.765 caratteri · 21 schermate
一
一
「ちょうど豆腐をかためるようにです」
良人の声でそう云うのが聞えた。
「豆を碾いてながしただけでは、ただどろどろした渾沌たる豆汁です、つかみようがありません、しかしそこへにがりをおとすと豆腐になる精分だけが寄り集まる、はっきりとかたちをつくるのです、豆腐になるべき物とそうでない物とがはっきり別れるのです」
「ではどうしてもにがりは必要なのだな」
それはお邸の与市さまの声だった。
「そうです、でなければ豆腐というかたちは出来あがりません」
良人も与市さまもひどくまじめくさった調子だった。菊枝はその部分だけ聞いたのだが、なんのために豆腐のかため方などを話しあっているのかわからず、「男の方たちはときによると子供のようなことに興がるものだ」とよく云われているのを思いだし、つい可笑しくなって独りでそっと笑っていた。それで良人の呼んでいるこえに気づかず、三度めのはげしい高声でおどろいて座を立った。
「茶を代えぬか、なにをしているんだ」
三郎兵衛はいきなりどなりつけた、棘々しい刺すような調子だった、そしてまるで人が違ったような意地の悪い眼だった、菊枝はあまりの思いがけなさにかっと頭へ血がのぼり、おそろしさで危うくそこへ竦んでしまうところだった。