Classici giapponesi con furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Leggi 日本婦道記 (にほんふどうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.765 caratteri · 21 schermate
「わたくし実家へはもどりません」
菊枝は泣きながら訴えた、
「どのようにも足らぬところは直します、きっと御家風に合うようにつとめます、どうでも去ると仰しゃるのでしたらもう暫く、せめてもうひと月でもお置き下さいまし、わたくしきっとお気に召すようにいたしますから」
良人は見向きもしなかった、姑もとりなしては呉れなかった。ずっと後になってからもそのときの絶望を思いかえすごとに、よくもあのとき自害せずにいられたものだと、自分で菊枝はぞっとする感じだった。実際は死ぬつもりだった、けれども「父上のおなげきを思え」と兄に云われたし、自分が死んでは登野村と仲沢家のあいだに救いようのない間違いがおこりそうに思えた。自分の面目は立っても、両家に禍を及ぼすのは道ではない、そう思案して菊枝は泣く泣く実家へもどった。
花のたよりも、若葉の眺めも菊枝にはかかわりなく過ぎていった。母親は亡かったけれど、兄に美代という妻があって、家事はすべて嫂に任されていたから、菊枝は自分のことを始末すればほかに用はなかった。
「ご苦労をなすったのですもの、少しはのんびりと御保養をなさいまし」
嫂は事ごとにそういたわって呉れた、父も兄もつとめて気をひきたてるように話しかけ、どうかして早く傷心を忘れさせようとする心くばりが哀しいほどありありとみえた。