Classici giapponesi con furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Leggi 日本婦道記 (にほんふどうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.620 caratteri · 26 schermate
……私の今日あることとその井戸とは浅からぬゆかりがあって、この家を訪れるたびに、いつもその井の端に佇んでは自分をかえりみるのが習わしになっていた。おばあさまが亡くなっては、もうたびたびそうする機会もないであろう。そしていつかはこの心にある記憶もはかなく薄れ去ってしまうかも知れない。忘却ということは拒み難い時のちからだというから。
私はふとおばあさまの亡くなったかたみに、あったことのあらましを書きとめて置こうと思いついた。筆を手にしなくなってから久しいので文章を綴るなどということは不可能だ。ただあったことをあったままに書くだけである。けれどもそれは、たぶんもういちどしっかりと自分の心をひきしめる機縁にもなって呉れるだろう。良人も子供たちも寝てしまい、西願寺の鐘がつい今しがた九つを打った。私は火桶に炭をつぎ足して独りそっとこの筆をとる。
私の父は保持忠太夫といって藩の奉行評定所の書役元締を勤めていた。席は寄合組で、お禄はそのころ二百石あまりだったと思う。はじめ御国許のつとめだったのが、のちに江戸詰めとなったのだそうで、私は芝愛宕下の御中屋敷で生れた。