Classici giapponesi con furigana
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にっきちょう
日記帳
江戸川 乱歩
Leggi 日記帳 (にっきちょう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6863 caratteri · 14 schermate
の思いを抱いて長い生がいを暮さねばならぬとは。
それは余りにも臆病過ぎた恋でした。雪枝さんはうら若い女のことですからまだ無理のない点もありますけれど、弟の手段に至っては、臆病というよりはむしろ卑怯に近いものでした。さればといって、私はなき弟のやり方を少しだって責める気はありません。それどころか、私は、彼のこの一種異様な性癖を世にもいとしく思うのです。
生れつき非常なはにかみ屋で、臆病者で、それでいてかなり自尊心の強かった彼は、恋する場合にも、先ず拒絶された時の恥かしさを想像したに相違ありません。それは、弟の様な気質の男にとっては、常人には到底考えも及ばぬ程ひどい苦痛なのです。彼の兄である私には、それがよく分ります。
彼はこの拒絶の恥を予防する為にどれ程苦心したことでしょう。恋を打開けないではいられない。しかし、若し打開けてこばまれたら、その恥かしさ、気まずさ、それは相手がこの世に生きながらえている間、いつまでもいつまでも続くのです。何とかして、若し拒まれた場合には、あれは恋文ではなかったのだといい抜ける様な方法がないものだろうか。彼はそう考えたに相違ありません。