Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はるのよる

春の夜

芥川 竜之介

Leggi 春の夜 (はるのよる) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2514 caratteri · 6 schermate

Aozora Bunko

「爺やさん、来て下さい!」

相手はNさんの声と一しょに、抑えられていた手を振りもぎろうとした。同時にまたNさんも左の手を離した。それから相手がよろよろする間に一生懸命に走り出した。

Nさんは息を切らせながら、(後になって気がついて見ると、風呂敷に包んだ何斤かの氷をしっかり胸に当てていたそうである。)野田の家の玄関へ走りこんだ。家の中は勿論ひっそりしている。Nさんは茶の間へ顔を出しながら、夕刊をひろげていた女隠居にちょっと間の悪い思いをした。

「Nさん、あなた、どうなすった?」

女隠居はNさんを見ると、ほとんど詰るようにこう言った。それは何もけたたましい足音に驚いたためばかりではない。実際またNさんは笑ってはいても、体の震えるのは止まらなかったからである。

「いえ、今そこの坂へ来ると、いたずらをした人があったものですから、……」

「あなたに?」

「ええ、後からかじりついて、『姐さん、お金をおくれよう』って言って、……」

「ああ、そう言えばこの界隈には小堀とか云う不良少年があってね、……」

すると次の間から声をかけたのはやはり床についている雪さんである。しかもそれはNさんには勿論、女隠居にも意外だったらしい、妙に険のある言葉だった。